役不足の意味と使い方|誤用や反対語を知らないと赤っ恥
「役不足」。よく使われる割には、よく誤用される用語ですね。本来の意味は「自分の実力に対して、与えられた役目が不足している」という意味です。今回は「役不足」で赤っ恥をかいたエピソードをご紹介したいと思います。
役不足の意味を知らずに使っていた
「その仕事、僕ではちょっと役不足だと思います」職場の男の子が謙遜するかのように言うのを聞いて「あちゃー」と思いました。実は私も若い頃、同じ間違いをしていたからです。
若い頃って、どうしても背伸びしようとしますよね。どこかで聞きかじった難しい慣用句や四文字熟語を、意味も知らずに使おうとしてしまいます。
私がまだ高校生になったばかりのころです。テレビを見ていたら、俳優さんが「役不足」という言葉を使いました。私はそれを、前後の流れを考えずにその言葉だけを聞いて「私にはとてもそんな大役は務まりません」と解釈してしまったのです。
役不足の反対の意味で使っていた
よせばいいのに、それ以降友達とドラマの話題になると「〇〇君にはあの大役は無理」という意味で「〇〇君にあの役は役不足だったよね~」「だよね~」という感じで、普段から「役不足」を反対の意味で使うようになっていました。
クラスで誰もやりたがらない仕事を任されそうになると「いえいえ、私では役不足ですから」とみんなの前で平然と反対の意味で使っていたのです(その時「ぷぷっ」と笑っていたちょっとイジワルな子は、その後国立大学に進学しました。知ってたなら教えなさいよ!)。
役不足の使い方の本来
役不足の使い方は本来「不満」を表すものです(真逆が「謙遜」ですね)。
舞台の制作発表の記者会見で役者さんが「ベテランのオレにこんなチョイ役をやらせやがって!」と怒っていたら「えーっ」とドン引きしますよね。
これが逆に「私にはとうてい務まるような役ではありませんが、精いっぱいやらせていただきます!」と言っていたら、とても好感を持つと思います。
「役不足」の本来の使い方は実は前者、つまり「不満」だったのです。
役不足の誤用例
「その役は、私ではちょっと役不足だと思います」この言葉を「謙遜」の意味で言ったのでしたら、それは誤用です。言い方を変えると「その役を演じるには私のレベルではまだ無理です」となりますが、これは役不足の誤用です。
「その役は、私ではちょっと役不足だと思います」この言葉を「不満」の意味で言ったのでしたら、それは正しいです。言い方を変えると「私レベルの役者に、こんな低いレベルの役をやらせるのか」となります。
役不足の意味を知った時顔から火が
職場の若い男の子が言った「その仕事、僕ではちょっと役不足だと思います」は、謙遜しつつも「こんな下らない仕事を俺にやらせやがって」と不満をぶつけるという、思っていることと発した言葉がちぐはぐという、何とも不思議な状態になります。実際に職場の方々の半数は???という表情でした。
休憩時間中に、私はその男の子に「役不足は謙遜じゃなくて、不満の意味なの」と教えると、スマホで意味を調べながら、顔を真っ赤にしていました。役不足の意味を知った時の、顔から火が出るような恥ずかしい思いをした過去の自分と重なって、ちょっと胸が痛くなりました。
役不足と力不足を上手に使い分ける
謙遜の意味で使うのでしたら、役不足ではなく「力不足」を使うのがいいですね。「その仕事、僕ではちょっと力不足だと思います」と言っていれば、何の問題もなかったと思います。
日本語にはこのように、普段から「誤用」しているものが沢山あるようです。思い出したらまた書いてみますね。